社会
2018年度修学院フォーラム「社会」<第6回>
〈エネルギーを考える 第7回〉
「地震国日本で原発は安全であり得るか?
 なぜ再生エネルギーに踏み切れないのか?」
 日本では古来、地震、火山、津波が頻繁に生じてきました。私たちは未だ、これらを制御する術を知りません。先祖はこれらと共存する賢い道を選んできました。しかし50 年位前から私たちは、科学技術の力を過信し、日本全国に50基を越える原発を作り、それから出る電気に依存する生活を享受してきました。2011 年3月のフクシマ原発事故は、そうした姿勢の脆弱さを見せつけました。今一度私たちは、どんな地盤の上に立っているのかを、地球科学の最先端の知見から見直してみたいと思います。また、原発に代わるものとして再生エネルギーが注目され、ドイツではとっくにそちらに舵を切ったのに、日本ではできていません。何が原因なのでしょう、一緒に考えてみたいと思います。
講師:竹本 修三 
(京都大学名誉教授)
講師:木村 護郎クリストフ 
(上智大学外国語学部ドイツ語科教授、同大学院国際関係論専攻主任)
「日本の原発と地震・津波・火山」
   講師:竹本 修三(京都大学名誉教授)

 固体地球物理学・測地学を専門とする私は、地震国ニッポンにおいて原発稼働は
とても無理だと考えています。世界地図の上に日本列島に起こるマグニチュード4
以上の地震を20 年間プロットすると、日本列島の島影は見えなくなってしまいま
す。次のマグニチュード6以上の地震が日本の何処で何時起こるかは、全く予測で
きません。こんなニッポンに、50 基超の原子炉が設置されたのは、世界的に見ても
異常です。一日も早くすべてを廃炉にしなければなりません。2014 年2 月19 日の
京都地裁における第3 回口頭弁論で、元滋賀大学学長の宮本憲一さんは、「2011 年
の福島第一原発災害は、足尾鉱毒事件や水俣病などの深刻な公害事件をはるかに超
える史上最大・最悪の公害である」と述べています。福島第一原発の事故は例外で
はなく、すべての原発が同様の危険性をはらんでいます。子や孫の世代に負債を残
さないために、すべての原発稼働を止めなければなりません。

「ドイツのエネルギー転換の思想と実践 」
   講師:木村 護郎クリストフ(上智大学外国語学部ドイツ語科教授) 

 福島第一原発事故に世界で一番強く反応した国は日本ではなく、なぜかドイツでし
た。「脱原発」や「再生可能エネルギー」はドイツ抜きには語れません。日本でエネ
ルギー問題を扱う書籍や記事などでは、必ずと言っていいほどドイツのエネルギー転
換に言及されます。ただしその評価は大きく分かれています。脱原発を進めようとす
る側からは、ドイツは見習うべき先進的な成功例として、一方、原発推進側からは、
真似をしてはならない失敗例としてあげられます。しかしそもそもなぜドイツは脱原
発を含むエネルギー転換という大きな課題に国をあげて向かうことになったのでしょ
うか。また現在、その進展はどうなっているのでしょうか。ドイツのエネルギー転換
の背後にある社会状況や思想、現状や展望についての素材を提供し、一緒に考える機
会にしたいと思います。


タイムテーブルエネルギー7.JPG

 
2019年1月13日 (日) 〜 14日(月・祝) (日)16:00~(月)16:00
場 所:関西セミナーハウス
(京都市左京区一乗寺竹ノ内町23)
参加費:一般 14,000円、学生 5,000円[宿泊3食込](京都市宿泊税200円別途)
締切日:2019年1月9日
*多数の方が参加して下さることを期待しております。参加して下さる方は、1月9日までに下の参加申込書をFaxでお送りください。    電子メール、電話、ウェブサイトフォームでも受け付けます。 *できるだけ全日程ご参加ください。やむを得ない場合は、部分参加でも結構です。部分参加の会費は事務局にお尋ね下さい。 *宿泊は、2~3名の相部屋が原則ですが、2,100円の追加料金でシングル利用もご準備できます。 *お申込みには、電子メールか電話で受け付けのお知らせを致します。申込み後2~3日経っても返信が無い場合は、お電話など でお問い合わせ下さい。  *前日正午以後のキャンセル、変更には、キャンセル料金が発生します。
<講師プロフィール>
竹本 修三(たけもと しゅうぞう) 氏
京都大学名誉教授
1942年5月 埼玉県秩父市に生まれ、県立熊谷高校を卒業するまで、山に囲まれた秩父に住む。
1961年4月 京大理学部入学時、南以外の三方が山に囲まれている京都の地形にも、安心感を覚えた。
1965年3月 理学部地球物理学科卒業後、宇治市の京大防災研究所に入所。伸縮計や傾斜計を用いた
地殻変動の研究に従事。最初の仕事が、関西電力が福井県美浜町に設置を計画していた美浜原発建設 予定地の地盤調査であったが、それ以後、原発の『安全神話』を疑ってみることもせずに、化石燃料 の乏しいわが国においては、膨大な電力重要を賄うために、原発依存もやむなしかと漠然と思ってい た。ところが2011年3月11日に福島第一原発の重大事故に直面し、自分の専門分野から、地震国ニ ッポンにおいて原発稼働はとても無理スジだと強く思うに至る。以来、原発ゼロをめざす城陽の会の 代表や大飯原発差止京都訴訟の原告団長を引き受けている。
<講師プロフィール>
木村 護郎クリストフ(きむら ごろうくりすとふ) 氏
上智大学外国語学部ドイツ語科教授、同大学院国際関係論専攻主任
1974年 名古屋市生まれ。一橋大学大学院博士課程修了。博士(学術)。社会を形成・運営する基盤 としての言語とエネルギーについて、主にドイツと日本に関して研究・教育・実践活動を行う。福島 第一原発事故を受けて、社会的・倫理的観点から、原発・エネルギー問題に関する日独比較に取り組 むほか、エネルギー転換を進めるNPO 法人のアドバイザーなども務める。キリスト教界の環境問題との向き合い方が重点テーマの一つ。
 関連の共編・共著に『今こそ原発の廃止を 日本のカトリック教会の問いかけ』(カトリック中央協議会)、『原発とキリスト教 私たちはこう考える』(新教出版社)、『ドイツとスイスから考え る環境・エネルギー問題へのアプローチ』(上智大学ヨーロッパ研究所)など。
  
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